屋根の消雪で雪下ろしを不要に!5つの種類とメリット・デメリットを解説
「屋根の消雪システムにはどのようなものがあるのだろう?」
「自分の家に消雪システムは合っているのかな?」
このような疑問を持っている方もいるのではないでしょうか。
消雪システムは屋根からの落雪を防ぐ方法として有効です。
しかし、メリットだけでなくデメリットもあり、地域によっては他の方法で落雪対策を講じた方がいいケースもあります。
本記事では、消雪システムの種類やメリット・デメリットを紹介しています。
消雪システム以外の落雪対策も紹介していますので、ぜひご一読ください。
目次
屋根からの落雪対策
屋根からの落雪を防ぐ対策には大きく3つの種類があります。
・消雪(融雪)システムを装備する
・無落雪屋根に変える
・雪止めを設置する
それぞれメリット・デメリットがあるので、1つずつ解説します。
消雪(融雪)システムを装備する
消雪システムとは、屋根に積もった雪をとかして、落雪を防ぐ装置のことです。
融雪システムや融雪装置とも呼ばれています。
雪がとければ雪下ろしの必要がないこともあり、豪雪地帯で使われることが多いです。
消雪システムにはさまざまな仕組みのものがあります。
各仕組みの特徴は後述しますので、ぜひご覧ください。
無落雪屋根に変える
無落雪屋根とは、傾斜がなく雪が落下しにくい屋根のことです。
屋根に積もった雪が自然にとけ、排水される仕組みです。
積雪の上に新雪が積もっていくため、下の方に積もった雪は冷たい外気に触れなくなります。
そのため、下の層からゆっくりととけていき、水となって流れていくのです。
積もった雪が落下するリスクがないうえ、雪下ろしの必要もありません。
ただし、積もった雪の重みによって屋根や建物そのものに負担がかかります。
雪の重みに耐えられる強度が必要なため、リフォームすると費用がかさんでしまう恐れがあります。
雪止めを設置する
雪止めとは、その名の通り、屋根から雪が滑り落ちるのを防止する役割を持つ装置のことです。
金具やネットで雪の落下を抑えながら、自然にとけるのを待つ仕組みです。
屋根に金具やネットを取り付けるだけなので、消雪システムの工事や無落雪屋根へのリフォームに比べてコストを抑えられます。
ただし、雪止めを取り付けても落雪を完全に防止できるわけではありません。
金具やネットを越える量の雪が降ると、雪止めでは滑り落ちる雪を受け止められなくなってしまうことがあります。
反対に、積雪量があまり多くない地域なら低コストで落雪を防止できるため、雪止めがおすすめです。
屋根に使える消雪(融雪)システムの種類
屋根に設置できる消雪システムには、5つの種類があります。
・自然落下式
・散水式
・ボイラー式
・電気式
・耐雪方式
それぞれメリットとデメリットを紹介するので、設置前に把握しておきましょう。
自然落下式
自然落下式は、雪が勝手に落ちるよう屋根の傾斜を急にするものです。
自然に雪が落ちるため、電気代や燃料代などのコストはかかりません。
特別な装置を設置するわけではないため、メンテナンスも不要です。
ただし落雪による事故のリスクがあるうえ、落ちてきた雪を溜めておくスペースを確保しなければなりません。
自然落下式は隣家との距離が離れており、敷地が広い家に向いています。
散水式
散水式は、井戸水や地下水をポンプで汲み上げ、ホースや消雪パイプで水を巻いて雪をとかす方式です。
屋根に満遍なく散水できれば、屋根に積もった雪をムラなくとかせます。
ただし、地下水がある地域でしか採用できません。
水源が深い場合は、地下水の掘削に多くのコストがかかってしまうのもデメリットです。
また、散水のための装置のメンテナンスが必要なため、初期費用だけでなく維持費もかかります。
ボイラー式
ボイラー式は、パイプを屋根の表面や下に設置し、灯油やガスで温めた不凍液を循環させて屋根に積もった雪をとかす仕組みです。
温水が通るパイプが雪に直接触れることで、効率よく融雪できます。
屋根の下にパイプを設置できるため、景観を損なわずに消雪できるのも特徴です。
デメリットは、パイプの設置に時間とコストがかかることです。
燃料や不凍液を使用するため、ランニングコストもかかります。
屋根の下にパイプを設置すると結露が発生しやすくなるため、結露対策も同時に行いましょう。
電気式
電気式は、電熱ヒーターなどの電気を熱源として雪をとかす方式です。
雪国の駐車場や歩道で採用されている、ロードヒーターを設置する方法もあります。
他の方式に比べて、ムラなく雪をとかしやすい点が特徴です。
ただし電気代がかかるため、光熱費の負担がかかりやすいです。
ただでさえ冬の光熱費が高くなりやすい雪国では、家計を圧迫しかねません。
耐雪方式
耐雪方式は、屋根に雪を溜めて、自然にとけるのを待つ消雪の方法です。
積雪の重みに耐えられる高い強度さえあれば、ランニングコストはかかりません。
ただし、建設やリフォームに高額な費用が発生してしまうのが懸念点です。
想定より積雪量が多く、屋根が雪の重みに耐えられなくなる恐れもあります。
消雪(融雪)システムのメリット
消雪システムを使うメリットは下記の3つです。
・雪下ろしの必要がなくなる
・景観を損なわずに設置できる
・部分的な設置もできる
1つずつ解説します。
雪下ろしの必要がなくなる
消雪システムを使えば雪をとかして排水できるため、雪下ろしが必要ありません。
豪雪地帯では、多くの雪が降るたびに雪下ろしをしなければならないこともあるでしょう。
消雪システムを設置すれば、雪下ろしにかかる時間と手間を省けます。
家の周辺に雪を下ろすわけではないため、屋根から下ろした雪かきの手間もかかりません。
高所での作業となる雪下ろしの事故や、落雪による事故の防止にもつながります。
景観を損なわずに設置できる
屋根の内部に設置する消雪システムを採用すれば、景観を損なわずに消雪できます。
例えばボイラー式の場合、屋根の下にパイプを設置すれば、外から見た際の変化がありません。
また、マグネット型のルーフヒーターのように、カラーバリエーションが豊富なものなら、屋根の色に合わせて設置できます。
消雪しつつ外観のデザインを保ちたいという人にも、消雪システムは向いています。
部分的な設置もできる
消雪システムは、設置する場所を選べます。
例えば、屋根全体の雪をとかすために設置するのもありですし、雪が積もりやすい谷部分のみに設置するのも選択肢のひとつです。
氷柱対策や落雪防止のため、軒先だけに設置することもできます。
部分的な設置なら、屋根全体に取り付けるよりもコストを抑えられます。
屋根の一部に雪が積もりやすい場合は、消雪システムの設置も検討してみましょう。
消雪(融雪)システムのデメリット
屋根の積雪対策として効果的な消雪システムですが、以下のようなデメリットもあります。
・落雪の恐れがある
・ランニングコストがかかる
デメリットを知らずに取り付けて後悔しないよう、事前にチェックしておきましょう。
落雪の恐れがある
消雪システムを設置すれば落雪を完全に防げるわけではありません。
消雪システムは雪をとかす仕組みです。
雪をとかすスピード以上に雪が積もり続けると、落雪してしまう恐れがあります。
積雪量が多くなくても気温が急激に上昇すると、雪がとけて滑り落ちてしまう可能性もあります。
落雪を防ぐためには、屋根の形状や地域に合った適切な消雪システムを取り付けることが重要です。
消雪システムの設置で失敗しないためには、専門業者に相談するのがおすすめです。
ランニングコストがかかる
消雪システムの多くは、燃料代や電気代、水道代などのランニングコストがかかります。
ランニングコストはさまざまな要因で高くなってしまうこともあるので、注意が必要です。
例えばボイラー式の場合は、原油の価格と比例してランニングコストが上下します。
電気式も、電気料金の値上げで金銭的な負担が重くなりかねません。
消雪システムを設置する際は、どれくらいの費用がかかるかを計算し、家計を圧迫しないシステムを採用しましょう。
消雪システムが向いている家と向いていない家
消雪システムが向いているのは豪雪地帯です。
屋根全体の融雪を促せるため、雪下ろしの手間を省きつつ、落雪のリスクを軽減できます。
一方で、積雪量が多くない地域では消雪システムが向いていません。
効果的に雪をとかせることは間違いありませんが、ランニングコストが高いため消雪システムほどの設備は不要なことが多い傾向にあります。
積雪量が多くない地域なら、ランニングコストがかからない雪止めがおすすめです。
雪止めなら、設置にかかる費用だけで落雪を防止できます。
例えば雪止めネットの場合、設置費用はトータルで約15〜46万円しかかかりません。
自分の家の落雪を防ぐためにどのような対策が有効なのかわからない方は、専門業者に相談してみるのがおすすめです。
豪雪地帯でなければ消雪よりも雪止めがおすすめ
屋根の消雪システムは、豪雪地帯で効果を発揮します。
雪をとかして排水できるため、雪下ろしが必要ありません。
ただし積雪量が多くない地域では、消雪システムほどの設備は不要なケースがほとんどです。
設置費用の安い雪止めでも落雪を防止できるので、ぜひ検討してみてください。
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内野 友和
この記事は私が書いています。
1979年生まれ。一級建築板金技能士。
父・内野国春の元で建築板金の修行を始め、2014年より代表となり家業を受け継ぐ。
20年以上、約5000件の現場経験で培った技術と知識で、建物の屋根・雨樋・板金・外壁工事を通じ、地域の皆様のお役に立てるように努力しております。